0258-89-7007

ブログBlog

Blog

0258-89-7007

営業時間

9:00~17:00

定休日

月曜日・水曜日

Home > ブログ > 小さなお灸が、体を動かす。③

ブログ

小さなお灸が、体を動かす。③

 

  1. お灸をした場所はここなのに、どうして体全体が変わるの?

 

「先生、不思議なんです。」

 

患者さんから、こんなお話を聞くことがあります。

 

「足にお灸をしたのに、お腹までポカポカしてきました。」

 

「手に鍼をしただけなのに、肩が楽になりました。」

 

「腰にお灸をしたら、夜ぐっすり眠れました。」

 

確かに、不思議ですよね。

お灸をしたのは、ほんの小さな一か所です。

それなのに、どうして離れた場所まで変わるのでしょうか。

 

少し想像してみてください。

 

学校で避難訓練をしているとします。

誰か一人が、

「火事だ!」

と知らせると、その声は近くの人へ伝わります。

 

近くの人は、また次の人へ伝えます。

やがて先生にも伝わり、学校全体が動き始めます。

 

最初に声を出したのは一人だけ。

でも、動いたのは学校全体です。

 

体の中でも、とてもよく似たことが起きています。

 

前回のお話では、お灸の小さな熱を皮膚の「見張り役」が見つけ、

 

「熱が来たよ!」

 

と神経へ知らせるところまで見ました。

 

でも、その知らせは、そこで終わりではありません。

まるでリレーのバトンのように、次から次へと伝わっていきます。

 

まず、お灸をしたすぐ近くでは、小さな変化が始まります。

血管が少し広がったり、

血液の流れが変わったり、

 

周りの細胞が、

「何か始まったぞ。」

と反応したりします。

 

これは、お灸をした場所のすぐ近くで起こる変化です。

 

そのあと、知らせは神経を通って背骨の中へ向かいます。

 

背骨の中には、神経が集まる大切な通り道があります。

そこからさらに脳へと情報が届きます。

 

脳は、その情報を受け取ると、

「なるほど。ここに刺激が来たんだね。」

と体全体の様子を見ながら考えます。

 

そして必要があれば、

「血の流れを少し変えてみよう。」

「筋肉をゆるめよう。」

「体を休みやすくしよう。」

というように、体へ指令を送ります。

 

ここで一つ、気づいてほしいことがあります。

脳は、

「右足だけ。」

「左手だけ。」

そんなふうには考えていません。

 

脳が見ているのは、

**“今の体全体”**です。

 

だから、お灸の刺激も、

一か所の出来事ではなく、体全体の情報

として受け取っているのです。

 

ここで、「あっ!」と思うことがあります。

私たちは、よく

「肩がこるから肩だけ。」

「腰が痛いから腰だけ。」

と考えてしまいます。

 

でも、体はそんなふうにはできていません。

 

例えば、寒い日に手だけ冷えることはあるでしょうか。

実際には、

首をすくめ、

肩に力が入り、

背中が丸くなり、

足先まで冷たくなります。

 

体は全部つながって動いているのです。

 

だから、足から入った情報が、お腹や肩、眠りにも影響することがあっても、不思議ではありません。

 

昔の東洋医学には、

「体は一つにつながっている」

という考え方があります。

 

昔の人は神経を見ることはできませんでした。

脳の働きも知りませんでした。

でも、

「足のお灸でお腹が変わる。」

「手の刺激で肩が変わる。」

 

そんな体の反応を、何百年も観察し続けてきました。

 

そして現代の医学では、

神経や脳、自律神経などの研究が進み、

体は刺激を”全身の情報”として受け取っている

ことが少しずつわかってきています。

 

昔の知恵と、今の科学が、少しずつ同じ景色を見始めているのかもしれません。

 

ここで大切なことがあります。

「このツボは、この臓器だけに効く。」

そんなふうに簡単に言い切れるわけではありません。

 

人の体は、それほど単純ではないからです。

 

同じ場所にお灸をしても、

ある人は肩が軽くなり、

ある人はお腹が動き、

ある人は眠りやすくなることもあります。

 

それは、お灸が毎回違う働きをしているのではありません。

その人の体が、その時いちばん必要な反応を選んでいるのです。

 

私は、お灸をするとき、

体に命令しているとは思っていません。

 

体に、

「ここを治してね。」

とお願いしているわけでもありません。

 

小さなお灸は、

「体さん、今のあなたはどうしますか?」

と、そっと問いかけているような存在なのだと思っています。

 

すると体は、

神経も、

血管も、

筋肉も、

細胞も、

みんなで相談しながら、

その人に合った答えを探し始めます。

 

だから、お灸をした場所だけではなく、体全体が少しずつ変わっていくことがあるのです。

 

次回予告

 

「お灸をすると、血の流れが良くなる。」

よく聞く言葉ですが、本当にそれだけなのでしょうか。

次回は、

「お灸をすると、なぜ血の流れが変わるの?」

について、一緒に見ていきましょう。

「温めたから血が流れる。」

その一歩先にある、体の仕組みをお話しします。

シェアするShare

ブログ一覧