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治るために、整える

「先生、この痛みを治してください。」

鍼灸院をしていると、よくいただく言葉です。

肩こり、腰痛、頭痛、膝の痛み、めまい、冷えなど、症状は人それぞれですが、多くの方は「治りたい」という思いを持って来院されます。

それは当然のことです。

痛みや不調があれば、一日でも早く楽になりたいと思うものです。

私も、その気持ちに応えたいと思っています。

しかし、治療を続ける中で感じることがあります。

それは、

「身体を治しているのは、私ではない」

ということです。

 

 

傷は誰が治しているのでしょう?

 

例えば、包丁で指を切ったとします。

傷口を洗い、消毒し、絆創膏を貼ることはできます。

でも、傷そのものを治しているのは誰でしょうか。

医師でしょうか。
薬でしょうか。
絆創膏でしょうか。

違います。

傷をふさぎ、新しい皮膚を作り、元の状態へ戻そうとしているのは、あなた自身の身体です。

風邪をひいたときも同じです。

薬は症状を和らげたり、回復を助けたりします。

しかし、最終的に身体を回復させているのは、自分自身の力です。

私たちの身体には、もともと元の状態へ戻ろうとする力が備わっています。

 

 

では、なぜ不調になるのでしょう?

 

身体に治る力があるなら、なぜ肩こりや腰痛、頭痛や冷えが起こるのでしょうか。

それは、その力が十分に発揮できなくなっているからかもしれません。

睡眠不足。

疲労の蓄積。

ストレス。

運動不足。

食事の偏り。

冷え。

年齢による変化。

こうした要因が重なることで、身体は少しずつバランスを崩していきます。

そして、その結果として症状が現れます。

症状は敵ではありません。

身体が

「少し無理をしていますよ」

「今の状態を見直してください」

と教えてくれているサインとも言えます。

 

 

症状だけを追いかけるとどうなるか

 

もちろん、症状を和らげることは大切です。

しかし、症状だけを追いかけ続けると、

肩が痛いから肩だけ。

腰が痛いから腰だけ。

頭が痛いから頭だけ。

という見方になってしまいます。

すると、一時的には楽になっても、しばらくすると同じ症状を繰り返すことがあります。

なぜなら、本当の原因が別のところに残っているからです。

 

 

植物を育てることに似ています

 

私は身体を整えることを、植物を育てることによく例えます。

元気のない植物があったとします。

葉っぱがしおれているからといって、葉っぱだけを引っ張っても元気にはなりません。

土はどうでしょうか。

水は足りているでしょうか。

日当たりはどうでしょうか。

根は元気でしょうか。

植物そのものを無理に成長させることはできません。

しかし、育ちやすい環境を整えることはできます。

すると植物は、自分の力で根を張り、葉を広げ、元気になっていきます。

身体も同じです。

 

 

鍼灸の役割とは

 

鍼灸は魔法ではありません。

また、私が患者さんを治しているわけでもありません。

鍼灸の役割は、

身体が本来持っている力を発揮しやすい状態をつくること

だと考えています。

血流を良くする。

呼吸を深くする。

筋肉の緊張を和らげる。

自律神経の働きを整える。

身体の動きを良くする。

こうした変化を通じて、身体が回復しやすい環境を整えていきます。

そして、その環境の中で働くのは、患者さん自身の力です。

 

 

治してもらうから、治れる身体へ

 

私は治療を否定しているわけではありません。

症状を改善することは大切です。

しかし、それ以上に大切なのは、

「治してもらう」から「治れる身体になる」

という視点です。

身体が整えば、

疲れにくくなる。

回復しやすくなる。

不調を繰り返しにくくなる。

日々を元気に過ごしやすくなる。

それは単に症状がなくなるだけではなく、その人らしく生活できる状態に近づくことでもあります。

 

 

治るために、整える

 

私たちの身体には、本来、自ら回復しようとする力があります。

鍼灸院の役割は、その力を引き出しやすい環境をつくることです。

だから私は、

治るために、整える

という言葉を大切にしています。

痛みや不調を抱えている方も。

健康を維持したい方も。

これから先も元気に過ごしたい方も。

症状だけを見るのではなく、その人自身が持つ力に目を向けながら、身体を整えていく。

それが、私の考える鍼灸です。

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