冷えは、どれくらい身体の力を奪っているのか
― 寒さが静かに低下させる、私たちの身体機能 ―
冬になると、
「なんとなく動きが鈍い」
「疲れが抜けにくい」
「痛みが出やすい」
そんな感覚を覚える方は少なくありません。
それは気のせいではなく、寒さや冷えによって、身体機能そのものが実際に低下しているからです。
今回は、冷えが身体にどんな影響を与えているのかを、
筋肉・神経・循環・代謝などの視点から、そっと紐解いてみましょう。
冷えると、まず動きにくくなる ― 筋肉と関節 ―
筋肉は、温かい状態で最も力を発揮します。
ところが冷えると、
- 筋力は5〜15%ほど低下
- 動き出しが遅くなる
- 疲れやすく、こりやすくなる
といった変化が起こります。
関節も同じです。
冷えによって関節の潤滑が悪くなり、
可動域が狭くなったり、朝のこわばりが強くなったりします。
「寒いと身体が固まる」
この感覚は、まさに身体の中で起きている現象そのものなのです。
神経の伝達も「冷え」で鈍くなる
神経は“電気信号”で情報を伝えています。
実はこの伝達速度、温度にとても敏感です。
冷えによって、
- 感覚が鈍くなる
- 反応が遅れる
- 動きの正確さが落ちる
といった変化が起こります。
つまずきやすくなったり、
ケガに気づきにくくなったりするのも、
神経の働きが静かに低下しているサインです。
「冷え」は自律神経を緊張させる
寒さにさらされると、身体は生き延びるために、
- 血管を縮め
- 熱を逃さないようにし
- 交感神経を優位にします
これは自然な反応ですが、
この状態が続くとどうなるでしょうか。
- 血流が悪くなる
- 内臓の働きが落ちる
- 回復モードに入りにくくなる
つまり、休んでも回復しにくい身体になってしまうのです。
巡りが滞る ― 循環と呼吸への影響
冷えによって末梢の血流は20〜40%ほど低下すると言われています。
血が巡らなければ、
- 酸素も
- 栄養も
- 回復の材料も
身体の隅々まで届きません。
また、冷たい空気は呼吸器にも負担をかけ、
呼吸が浅くなり、全身の代謝が落ちていきます。
代謝とホルモンも「冷えの影響を受ける
一時的な寒さでは、身体は代謝を上げて対応します。
けれど、冷えが続くと話は別です。
- 代謝が落ちる
- ホルモンの調整がうまくいかなくなる
- 気力まで低下する
「冷えは万病のもと」
この言葉は、決して大げさではありません。
冷えとは 「体温」ではなく「機能低下」
冷えは単なる温度の問題ではなく、
巡り
情報伝達
回復力
こうした身体の基本機能が、全体的に鈍くなった状態です。
だからこそ、
温めること、巡らせること、整えることが大切になります。
鍼灸が冷えに対して力を発揮するのは、
この“全体の働き”にそっと介入できるからなのかもしれません。
次回予告
冷えが「慢性化」したとき、身体の中で起こること
冷えは、我慢すれば慣れるものではありません。
むしろ、気づかないうちに身体の当たり前を奪っていきます。
次回は、
- 冷えが慢性化すると何が変わるのか
- なぜ「年々冷えやすくなる」のか
- 不調が連鎖していく仕組み
について、さらに深く掘り下げていきます。
「昔は平気だったのに」
そんな言葉が増えてきた方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
