「起立性調節障害 ― 朝がつらい子どもたちへ。身体の仕組みと、そっと支える方法」
朝になると、頭が重くて起きられない。
立ち上がると、クラッとめまいがする。
学校に行こうとしても、身体がうまくついてこない──。
そんな子どもが増えています。
これが「起立性調節障害(OD)」と呼ばれる状態です。
◆ 起立性調節障害とは?
人が立ち上がると、血液がいったん下半身に下がります。
その時、本来なら自律神経が瞬時に働き、
脳へ血液を送り続けようと調整しています。
しかし、この調整がうまくいかないと、
- 朝起きられない
- めまい・立ちくらみ
- 頭痛や腹痛
- 動悸、息苦しさ
- 午前中はしんどいのに夕方は元気
といった症状が出てきます。
決して「怠け」や「気の持ちよう」ではありません。
成長期の自律神経はとてもデリケートで、環境やストレス、体力低下が重なるとこうした不調が起こりやすくなるのです。
◆ 現代医学的な対策
治療は、薬よりもまず 生活の調整 が中心になります。
◎ 水分と塩分をしっかり
血液量が増え、脳への血流が保たれます。
◎ 下半身を鍛える運動
ふくらはぎや太ももは“第二の心臓”。
軽い筋トレやウォーキングでも改善に近づきます。
◎ 朝のリズムづくり
- 起きてすぐの水分
- カーテンを開けて光を浴びる
- ゆっくり姿勢を変える
など、小さな習慣が大きな助けに。
◎ 必要に応じて薬
症状が強い場合、血圧を支える薬や漢方が処方されます。
◆ 東洋医学から見た起立性調節障害
東洋医学では、以下のような体質の乱れが関わると考えます。
- 気虚(エネルギー不足)
→ 朝が弱い・疲れやすい・食欲がない - 腎の弱り
→ めまい、起立時の不調、冷え - 肝の気の停滞
→ 自律神経の乱れや情緒ストレス - 水滞
→ 頭重感、めまい、体のだるさ
鍼灸は、
気血を補う・自律神経を整える・頭部血流を改善する
という点で非常に相性の良いアプローチです。
◆ 養生のヒント:朝を“やさしく始める”
起立性調節障害のお子さんにとって、
朝はハードルの高い時間です。
だから、
“がんばらせる”のではなく、“やさしく始める準備”を整える
ことが大切。
- 布団の中で深呼吸
- 手足をゆっくり動かす
- 上体を起こしながら水分
- 朝食は温かく、消化にやさしいもの(味噌汁・スープなど)
できたことを一つずつ認めていくことが、
心の回復にもつながります。
◆ さいごに
起立性調節障害は、適切にサポートすれば多くが改善していく状態です。
“焦らせない・否定しない・伴走する”ことが回復の土台になり、
そこに鍼灸や養生がそっと寄り添うことで、子どもたちの毎日が少しずつ軽くなっていきます。
