0258-89-7007

ブログBlog

Blog

0258-89-7007

営業時間

9:00~17:00

定休日

月曜日・水曜日

Home > ブログ > 鍼灸物語第四話 季節と養生

ブログ

鍼灸物語第四話 季節と養生

 

―自然とともに生きる鍼灸の知恵―

 

一年のはじまりを知らせる風が、

やわらかく頬をなでていきます。

昔の人たちは、季節の変わり目に耳をすませ、

空や風の色を感じながら、からだの声にも耳をかたむけていました。

鍼灸や養生の知恵は、そんな「自然とともに生きる」暮らしの中から生まれたのです。

 

 春 ― のびやかに、めぐる

 

春。

長い冬をこえて、木々の芽がいっせいにふくらみます。

村はずれの道を歩く咲(さき)さんは、

思わず深呼吸をしました。

「風のにおいが変わったなぁ。」

でも春の風は、心を浮き立たせる一方で、

体の中の“気”を乱しやすい季節でもあります。

咲さんは、胸のあたりを手でおさえながら、

そっとお灸をすえました。

ツボの名前は膻中(だんちゅう)。

あたたかさが胸に広がると、

張りつめていた気持ちも、ふっとゆるんでいきます。

春は「のびやかに」。

新しい季節の風に、からだを合わせていくときです。

 

 夏 ― 火の季節に、冷やさぬ知恵を

 

夏。

太陽がまぶしく、畑も人も、いのちが輝く季節です。

畑仕事をしていた源さんは、

つい冷たい井戸水をがぶがぶと飲み、

お腹をこわしてしまいました。

そんなときは、

**足三里(あしさんり)と関元(かんげん)**にお灸を。

「内側をあたためると、体の芯が元気になるんだよ。」

おばあちゃんにそう教わった言葉を思い出します。

お灸のぬくもりに包まれながら、源さんはつぶやきました。

「夏は冷やすより、ゆるめることが大事なんだな。」

夏は「冷やさず、緩めすぎず」。

太陽の力と、自分の力のバランスを。

 

 秋 ― うるおいをまもり、こころをやすめる

 

秋。

夕日が山を赤く染め、虫の声が風にのります。

お寺の庭を掃いていた老人の手が止まりました。

「今年の秋風は、少し冷たいな。」

秋の空気は乾きやすく、体の“潤い”を奪っていきます。

老人は、胸のあたりの**中府(ちゅうふ)**というツボを温めながら、

静かに深呼吸しました。

よもぎの香りがゆっくりと立ちのぼり、

心の奥までしみこんでいくようです。

秋は「うるおいとやすらぎ」。

深い呼吸で、心をしずめる季節です。

 

 冬 ― あたため、春をまつ

 

冬。

雪がしんしんと降りつづき、

家々の屋根は真っ白に。

囲炉裏のそばで、おばあちゃんが孫の手をにぎります。

「寒い日はね、腰をあたためるといいんだよ。」

そう言って、お灸をすえるのは**腎兪(じんゆ)**のツボ。

小さな火のぬくもりが、体の奥に届いていきます。

孫のほっぺもぽかぽかになり、

ふたりの笑い声が、雪の夜にやさしく広がりました。

冬は「ゆっくり、あたためて」。

春にむけて、力をたくわえる季節です。

 

自然とともに生きる

 

春にのび、夏にかがやき、秋にみのり、冬にやすむ。

自然の流れは、私たちの体の流れでもあります。

鍼灸の知恵は、

「季節とともに生きること」を教えてくれます。

無理をせず、焦らず、

その時々の風を感じながら、自分のリズムを大切に生きる。

それこそが、いちばんの**養生(ようじょう)**なのです。

 

おわりに

 

一年を通して、自然は変わり続けます。

そして私たちの体も、同じように変化しています。

春には風を感じて胸をひらき、

夏には陽の力を受けとめ、

秋には静かに呼吸を深め、

冬にはあたたかく包まれる――。

そんなふうに暮らす中で、

お灸や鍼は、そっと寄り添いながら体を守ってくれます。

季節を感じることは、

じぶんを大切にすること。

今日も自然の中で、やさしく呼吸してみましょう。

シェアするShare

ブログ一覧