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鍼灸物語第一話 お灸とあたための知恵

〜やさしさを伝える、あたための時間〜

「今日は手が冷たいね。少し、お灸をしてみようか。」

夕暮れどき、江戸の町家の小さな台所。

かまどの火を見つめながら、お母さんが娘の手をそっと包みこみました。

 

  昔のくらしと“冷え”

今のようにエアコンもカイロもない時代。

冬の寒さは、家の中でも身にしみるものでした。

そんな中で人々は、「体をあたためること」こそが健康の基本だとよく知っていたのです。

湯たんぽ、温石(おんじゃく)、生姜湯、そして――お灸。

どれも身の回りのもので、体をいたわるための知恵でした。

 

 よもぎの香りと、お灸のぬくもり

お母さんが小さな箱から取り出したのは、ふわふわのもぐさ。

よもぎの葉を乾かして、細かくしたものです。

指先で小さく丸めて、娘の足のすねにのせ、火をつけると――

じんわり、やさしい熱が伝わってきました。

「痛くないの?」と娘が聞くと、

お母さんはにっこり笑って言いました。

「これはね、痛みをとるためじゃないの。

 からだの中の冷たい風を追い出して、あたたかい陽を呼ぶんだよ。」

もぐさが燃えるたび、よもぎのやさしい香りが広がり、

家の中には静かな安心感が満ちていきます。

 

 “あたためる”という養生

昔の人たちは、体を冷やすことが「病のもと」と考えていました。

だからこそ、手足やお腹を温めることを大切にし、

お灸を「家庭の知恵」として受け継いできたのです。

それは単なる治療ではなく、

「今日も一日、おつかれさま」と体に語りかける時間でもありました。

お灸をすえることで、心もほっと落ち着く――

そんな“ぬくもりの養生”だったのです。

 

  いまに生きる、あたための知恵

現代の私たちは、冷たい飲み物や冷房、スマホによる血流の滞りなど、

“冷え”を感じる場面がたくさんあります。

そんなときこそ、昔の人の知恵を思い出してみましょう。

手をこすって温める。

お風呂にゆっくりつかる。

お灸でツボを温める。

たったそれだけで、体は「ありがとう」と応えてくれます。

 

  さいごに

お灸は、痛みを治す道具である以上に、

**「自分をいたわる、やさしい時間」**をつくるもの。

そのぬくもりは、何百年も昔から、人の心をあたためてきました。

今日も一息ついたら、

よもぎの香りに包まれて、

からだを、こころを、少しだけ休めてみませんか。

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